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コンクリート打ち放し仕上

           

コンクリートと断熱

母の家リビング
これまで、いくつものコンクリートの住宅を作らせていただきました。
ほとんどが内外打ち放し仕上げの住宅です。
当然のことながら断熱材により断熱はできません。断熱はコンクリートの厚さによる断熱のみとなります。

一つの指標である熱伝導率を上げてみると
単位:W/mK
コンクリート:1.6
鉄:53
ガラス:1
木材:0.12-0.19
グラスウール16k:0.045
ポリスチレンフォーム:0.04

となり、決して褒められたものではありません。

それでは、なぜコンクリート打ち放しを選択するのでしょうか。

建築に求める性能のちがい

平山の家 外観
 こちらの住宅で最優先で重視したのは台風への対策です。
なによりも台風の際に命を守れること。
この場所は、海に面している訳でも山の頂上でもありません。
しかし、以前の台風ではコンクリートの電柱が何本も折れてしまいました。どうも風のとおり道になってしまったようです。この敷地は僕の通勤コースでしたので、強烈に記憶に残っていたのです。
 実は設計依頼の際には鉄骨造3階建てを希望されていたのです。
台風で電柱が折れてしまうような場所に鉄骨造で建てると建物がかなり揺れることになります。
さらに外壁のパネルはその揺れを吸収するためにパネル間のシーリング等にはかなりの負担がかかるのです。
これは仮に木造3階建てにしたところで状況は変わりません。
かといってコンクリートで建てれば予算をオーバーしかねない。
 そこで提案したのがコストを極限まで絞り込んだ両面打ち放しのコンクリート住宅でした。
決められた予算の中でまずはシェルターを作り安心して暮らせるベースを作るという案です。
そのベースがしっかり出来ていれば、将来、必要に応じて断熱などは強化することができるからです。
 

打ち放し仕上げならではの利点もあります

断熱では欠点のあるコンクリート仕上げですが、良い点もあります。
実はコンクリートの壁や床の打設というのはなかなか厄介で鉄筋だらけの型枠の中にコンクリートをきちんと詰めるのは至難の業といえます。

というのも通常はコストダウンのためもあり、壁の厚さも必要最小限とし、配筋も机上で計算通りに配筋できるものとして設計をし施工をやっていきます。
しかし鉄筋の配筋というのはスラブ(床)と梁と柱と構造壁の配筋が四方八方から入り込んで重なり合っていくため2次元の図面だけで検討しても計算通りの大きさには納まらずそのしわ寄せが型枠と鉄筋の規定された隙間の中に納まらないという事態が発生するのです。
さらに鉄筋どおしが集中する部分ではコンクリートの一部を成す粗骨材である砂利が通っていかないほど密になった場所も発生します。そのような状況は粗骨材が防波堤となりコンクリートがきちんと入っていかなくて当然のことながら型枠を外した際にジャンカとして表れます。しかし隠しようのない打放し仕上となると、設計はもとより鉄筋の施工から型枠建込み、打設までをより慎重に行うことになり、必然的に建築の精度はあがっていきがちです。
そして、施工後にも丸裸であることで、通常なら仕上げ材で隠れてしまう部分の不具合もしっかりと確認できて確実な処置ができるという点、これこそ打放し仕上の一番の利点と言えるでしょう。

打設立会

打設用一式
ちなみに三浦設計では基礎以外のコンクリート打設には極力立会い、横長の窓の下などコンクリートの入りにくい部分を私自らまわり、木槌で叩いて最高のコンディションのコンクリート造りに力を尽くしております。
写真は私が打設のときに現場で着用しているもの。
木槌は型枠たたき用に職人に作ってもらったもので、叩く部分の長さや厚みなど、サポート鋼管の隙間からでもきっちり叩くことができるようになっています。

コンクリート打放し仕上風


街なかでみかけるコンクリート打放し仕上の部分を近づいてよ~く目を凝らして見てみてください。じつは打放し模様を描いたコンクリートであることがしばしばあります。
たぶん9割以上が本当の打放し仕上げではないのですが、素人目には違いはわからないと思います。たぶんプロの人でもなかなか見分けられないくらいに上手に補修をするのです。
以前、そういう仕上げをしているメーカーの営業が来まして、三浦設計の建物がほぼほぼ補修なしの本物の打放しだと言う話をしたら有り得ないと驚いておりました。
そのくらいまん延しているのが打放し仕上風の建築です。
では何が違うのか・・・コンクリートの肌の力強さ、緊張感、エネルギーみたいなもの。
私にはその違いが大切ですし、クライアントにはそれをぜひ楽しんでいたただきたいとおもっています。

コンクリート打放し建築の住まいかた

この温熱環境のわるい建築でどう生活すれば快適なのか。そこには工夫が必要です。

おすすめなのは24時間の空調機の使用です。
コンクリートは蓄熱材として使うにはかなりいい材料です。
水の2.4倍以上の重さがあり、熱を蓄えることができます。
これが夏と冬にイタズラをします。外気温をたっぷりためてそれが半日くらいで室内側にまわってきます。そして輻射熱を出すのです。

たとえば冬、エアコンの設定は22度にして室温計も22度になっているのに身体がなかなか温まらないというようなことがよくあります。実は室温は22度でも外部に面したコンクリートの壁面温度は12度だったりということがあります。これは室温が22度でありながら壁から12度の熱を放射しているからでそれが身体表面を冷やしてしまうのです。その輻射熱と室温の温度差が人の感覚に違和感として感じられる。
この状況は必要なときだけエアコンを掛けるような使い方の時に表れます。
コンクリートは比重が大きいので、比重のかるい暖かな空気で温めるのには時間がかかりすぎるのです。だからこその24時間暖房、数日掛けて壁面温度が上昇してきます。
そして壁面の温度が18度になったとします。そうすると輻射熱で暖かさを感じるようになります。室温が22度でなくても、室温も壁面もまんべんなく18度になると結構快適だったりするのです。それは輻射の熱と空気の熱が近いので身体に違和感がなくなるからなのです。

わかりやすく説明しますと、真夏のイベントなどの際にでかい氷柱などを置いて涼を撮ったりしますね。氷の近くにいると結構涼しい。あれは氷からの輻射熱が人の身体を冷やすからこそ、真夏の気温のなかでも涼しく感じるのです。

それと同じことが、エアコンをつけたり消したりする部屋の中ではおこってしまうのです。
外気の温度を蓄えた壁面が氷柱、エアコンで温めた空気が夏の気温の状態。その状態を作らないための24時間空調とお考えください。

空調の電気代ですが24時間にしてもさほど差はありません。場合によっては安くなったりもします。
24時間空調にして一旦あたたまった壁面は簡単には冷えませんし、輻射温度のおかげでエアコンの設定温度は弱めにできてしまいます。快適なぶんだけお得ですね。

両面コンクリート打放し住宅が建築できるのは2024年までか?

このような両面コンクリート打放しの建築ですが、建築できるのは次の建築基準法が改正されて施行されるまえまでとなります。
施行時期がまだ確定しておりませんが、来年2024年が最後になるのではないかとおもいます。

現行法では小住宅や小建築は省エネ義務の対象となっておりませんが、改正後はすべての建築が省エネ対象となってしまいます。そうなりますと熱貫流率の大きなコンクリートの両面打放しでは基準をクリアできなくなるからです。
実は現在でも住宅ローンなどの融資次第では省エネを条件としていることもありますのでご注意ください。

ストイックな建築が好きで打放し仕上げの建築をご希望の方はぜひ早めに設計のご依頼をお願いします。

一緒に最後の両面打放し仕上の建築を作りましょう。

               

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